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FDI専門家会議:高齢化人口のための口腔保健

Patrick Hescot会長と世界各国の参加者
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水. 1 6月 2016

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スイス・ルツェルン:5月3~5日、世界歯科連盟(FDI)は、ルツェルンで「高齢化人口のための口腔保健(OHAP)」に関する3日間の会議を開催した。この会議は、「一生涯の口腔保健:基本的権利」というテーマに焦点を絞ったものだった。世界保健機関(WHO) をはじめ、世界中から計20人の専門家が集まり、増大する口腔疾患の負担に対処し、高齢者の歯の喪失を予防するための戦略を協議した。

2015年3月、「健康寿命延伸のための歯科医療・口腔保健」をテーマにWHOおよび日本歯科医師会によって東京で開催された世界会議の後、高齢化人口に対する疾病対策の枠組みを広げ、確実に口腔保健の課題に取り組むべく、FDIがGC International AG(GCIAG)と連携し、OHAP構想に着手した。

会合では、FDI のPatrick Hescot会長がこう述べた。「医療やテクノロジー、公衆衛生および政策の分野における進歩のおかげで、人間の寿命が長くなったことは素晴らしい功績である。しかし、人々がただ長生きするだけでなく、口腔疾患のないさらに健康的な生活を確実におくれるようにすることが、歯科医としての我々の役割であり、このことが、人間の総体的な健康と幸福を守るうえで基礎となる役割を果たす。口腔保健は、健康的に歳を重ねることについて無視されがちな分野であるからこそ、今回の会議はその不均衡を正すための重要な機会である」。

スイス歯科医師会会長であり、この地で開催された会議の主催者でもあるBeat Wäckerle氏はこう付け加えた。「健康的に歳を重ねるには、歯の喪失を避けることがきわめて重要である。しかし、重度の虫歯や進行した歯周病を主な原因とする歯の完全喪失は、世界中の高齢者によくみられる。そのため我々は、至急対策を取り、予防戦略を立てておかなければならない」。

多くの高所得国では歯の喪失が減少しており、自分の歯で機能が果たせる状態に保てている高齢者が増えているが、WHOの最新の統計によれば、中~低所得国では口腔疾患の有病率が増大している。ほとんどの口腔疾患およびその症状は専門的歯科治療を必要とするが、なかなか治療が受けられなかったり、治療を受けに行けなかったりという理由から、高齢者では口腔保健サービスの利用率が顕著に低くなっている。

GCIAG社長兼CEOの中尾眞氏は、「日本のような国では、人口の30%がすでに60歳を超えている。現在最も大きな変化を経験しているのは中~低所得国であり、GCがFDIと連携し、200カ国を超える歯科医師会のネットワークを通じてこの問題にグローバルレベルで取り組み、活動的に健康的に歳を重ねることを楽しめるであろうときに口腔疾患が原因で必要以上に苦しんでいる何百万人もの人々に前向きな変化をもたらすことができるよう力を注いでいる」と強調した。

ルツェルンでの先日の会合の成果は、9月7~10日にポーランドのポズナンで開催されるFDI年次大会で発表される予定だ。また、その大会では、高齢化人口の口腔疾患に立ち向かうための戦略が立ち上げられるだろう。

「国際的な健康評価のグローバル疾患負担研究」によると、世界では39億人が口腔疾患に罹患しており、世界人口のほぼ半数(44%)に未治療の虫歯があるため、この研究の調査対象となった全291種類の病状のうち口腔疾患が最も有病率が高いものとなっている。

不健康な歯は心理学的にも生理学的にも健康に影響を及ぼす可能性があり、生活の質を著しく低下させる。機能的な問題に加えて、不健康な口腔状態や歯の問題が、歯肉の炎症や質の悪い単調な食生活をもたらす可能性があるし、そのようなあらゆる問題が栄養不良のリスクを高める。FDIは、至急対策をとらなければ、この問題は悪化する一方であることを強調した。WHOは、世界の60歳以上の人口の割合が2015年から2050年の間に12%から22%とほぼ倍になることを予測している。

FDI World Dental Federation

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